PER・PBR・ROEでは分からない「その黒字は本物か」

利益の質スキャン

判定は全部このページに書いてある式で決まります

生成AIは使っていません。外部の株価APIも財務APIも呼びません。 同じ数字を入れれば、いつ誰がやっても同じ答えになります。 ここに書いていない補正や重み付けは入っていません。

しきい値には2種類あります。①外の世界で通っている線(Beneish の -1.78 など)と、②このツールが置いただけの線です。 ②はあくまで色分けのための線で、学術的な基準ではありません。 数字そのものを見て、自分で判断してください。

判定エンジン v1.0(見直し 2026-08-26

4つの信号と重み

重みつき合計=Σ(水準 × 重み) ÷ Σ(2 × 重み)。判定できなかった信号は分子からも分母からも外します。

信号重み見ているもの
利益とキャッシュ3その黒字は、実際に入ってきた現金で裏づけられているか
営業CF3本業を回した結果、現金は増えているか減っているか
運転資本2売上の伸びに対して、売掛金と在庫だけが不自然に膨らんでいないか
資金繰り2現金が細ったとき、借入と自己資本で持ちこたえられるか

利益とキャッシュ・営業CFを重く(各3)、運転資本・資金繰りを軽く(各2)しています。 前の2つは「黒字が本物か」に直接答える数字で、後の2つは「なぜそうなっているか」「あとどれくらい持つか」を補う数字だからです。 合計の 25% 未満で「1点だけ気になる」、25% 以上で「複数の点が気になる」、55% 以上で「黒字でも危ない兆候が濃い」。 ただし利益とキャッシュか営業CFに危険信号が点いていれば、合計がいくつでも最低「複数の点が気になる」にします。

① 利益とキャッシュの乖離(アクルーアル)

アクルーアル比率 = (当期純利益 − 営業CF) ÷ 平均総資産
平均総資産 = (当期の総資産 + 前期の総資産) ÷ 2

営業CF ≦ 0                      → 危険
アクルーアル比率 ≧ 10%           → 危険   ②この線
アクルーアル比率 ≧ 5%            → 注意   ②この線
それ以外                          → 安全

当期純利益 ≦ 0 のときは判定しない(赤字に「黒字の質」は問えない)

利益と営業CFの差を「アクルーアル(発生主義による上乗せ)」と呼びます。 売上を計上しても現金が入っていなければ、その差はここに出ます。 Sloan(1996)は、アクルーアルの大きい会社ほどその後の利益が続きにくいことを示しました。 ただし示されたのは順位(上位・下位に分けたときの差)であって、 「◯%を超えたら危ない」という線ではありません。ここの 10% / 5% は色分けのために本ツールが置いた線です。

② 営業キャッシュフローそのもの

営業CFマージン = 営業CF ÷ 売上高

2期続けて 営業CF ≦ 0                       → 危険
当期の 営業CF ≦ 0                          → 危険
営業CF < 当期純利益 × 0.5(純利益がプラスのとき) → 注意   ②この線
それ以外                                     → 安全

損益計算書の利益は会計の見積り(引当・償却・収益認識の時点)でかなり動きますが、 営業CFに出る現金の出入りは動かしにくい数字です。 黒字と営業CFマイナスが同時に立っている状態が、いわゆる「黒字倒産」の手前で最初に見える形です。 ただし1期だけのマイナスは正常な理由でも起きます(急成長で仕入れが先行した、大口の入金が期末をまたいだ、季節性が強い等)。 だから2期続いているかどうかを分けて見ています。

③ 運転資本の異常(売掛金・在庫)

売上債権回転日数 = 売上債権 ÷ 売上高 × 365
棚卸資産の対売上日数 = 棚卸資産 ÷ 売上高 × 365

DSRI = 当期の売上債権回転日数 ÷ 前期の売上債権回転日数
在庫指数 = 当期の対売上日数 ÷ 前期の対売上日数

max(DSRI, 在庫指数) ≧ 1.3  → 危険   ②この線
max(DSRI, 在庫指数) ≧ 1.15  → 注意   ②この線
それ以外                → 安全

前期と当期の売上高がそろっていないときは判定しない

売上が伸びれば売掛金も在庫も増えます。問題は「売上より速く増えているか」です。 回転日数に直すと、売上の伸びを割り算で打ち消したうえで比べられます。 DSRI は Beneish M-Score の構成変数そのものですが、1.15 / 1.3 という線は本ツールが置いたものです。

棚卸資産の回転日数は本来売上原価で割ります。 このツールは売上原価を必須にしないぶん売上高で割った簡便値を使っており、 水準そのものではなく前期比の変化だけを見ています (粗利率が大きく動いた年は、この簡便値もその分だけ動く点にご注意ください)。

④ 資金繰りの余力

自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産
返済年数     = 有利子負債 ÷ 営業CF

有利子負債があり 営業CF ≦ 0        → 危険
返済年数 ≧ 10年                    → 危険   ②この線
返済年数 ≧ 5年                     → 注意   ②この線
自己資本比率 < 10%                → 危険   ②この線
自己資本比率 < 20%                → 注意   ②この線
(借入側と自己資本側の重いほうを採用)

自己資本も有利子負債も未入力なら判定しない

利益の質が落ちても、手元に厚みがあれば時間を稼げます。逆に薄ければ、同じ悪化でも一気に効きます。 ここは「危ないか」ではなく「悪化したときにどれだけ持ちこたえられるか」を見る欄です。

業種による格下げ

判定を消すのではなく、格下げして理由を書きます。

一般(製造・小売・サービスなど)
格下げなし

格下げはしません。4つの信号をそのまま読みます。

高成長期(増収率が高い状態が続いている)
格下げ対象:運転資本

売上が伸びている会社では、売掛金と在庫が売上より先に増えるのが普通です。運転資本の信号は「危険」まで上げず「気になる」で止めます。

設備投資先行(インフラ・鉄道・電力・大型製造など)
格下げ対象:資金繰り

先に設備を作ってから回収する業種では、有利子負債が営業CFの何年分にもなるのが普通です。資金繰りの信号は「気になる」で止めます。

不動産(販売用不動産を棚卸資産に持つ)
格下げ対象:運転資本・資金繰り

販売用不動産は棚卸資産に積み上がり、その仕入れはプロジェクト借入で賄われます。在庫増と借入増が事業そのものなので、両方の信号を「気になる」で止めます。

金融(銀行・保険・証券・リース)
格下げ対象:利益とキャッシュ・営業CF・運転資本・資金繰り

金融業では貸出や預金の増減が営業CFに入るため、営業CFのマイナスが不調を意味しません。このツールの前提(本業=モノやサービスを売って現金を得る)が当てはまらないので、総合判定は出しません。

格下げは「危険 → 注意」まで。信号を消したり、点数を勝手にゼロにしたりはしません。 格下げが起きたときは、結果画面に「何を格下げしたか」を必ず出します。

Beneish M-Score / Piotroski F-Score

どちらも公開された式です。このツールが係数を作ったわけではありません。

Beneish M-Score(8変数)

M = −4.84
  + 0.920 × DSRI   売上債権回転日数の前期比
  + 0.528 × GMI    売上総利益率の悪化(前期÷当期)
  + 0.404 × AQI    資産の質(1 −(流動資産+有形固定資産)÷総資産)の前期比
  + 0.892 × SGI    売上の伸び(当期÷前期)
  + 0.115 × DEPI   減価償却ペースの鈍化(前期÷当期)
  − 0.172 × SGAI   販管費率の前期比
  + 4.679 × TATA   (当期純利益 − 営業CF) ÷ 総資産
  − 0.327 × LVGI   負債比率の前期比

M > -1.78 → 利益操作を行った企業群に相対的に近い   ①外の線

Beneish(1999)が、利益操作で摘発された企業群とそうでない企業群を分けるために作った統計モデルです。粉飾の証明ではありません。もともと誤検知の多いモデルで、成長が速い会社・事業構成が変わった会社・ M&Aで資産の中身が変わった会社は、健全でも上振れします。 分母が使えない変数があるときは 1.0(変化なし)として計算し、どれを丸めたかを結果に出します。

Piotroski F-Score(9項目・各1点)

収益性  1. ROA(当期純利益 ÷ 期首総資産)がプラス
        2. 営業CFがプラス
        3. ROAが前期より改善
        4. 営業CF ÷ 期首総資産 > ROA(=営業CFが純利益を上回る)
安全性  5. 固定負債 ÷ 平均総資産 が低下
        6. 流動比率(流動資産 ÷ 流動負債)が上昇
        7. 新株を発行していない
効率    8. 売上総利益率が上昇
        9. 総資産回転率(売上高 ÷ 期首総資産)が上昇

8〜9点=方向が良い / 0〜1点=方向が悪い   ①外の線

Piotroski(2000)。財務の方向を見るスコアで、 粉飾の検出器ではありません。4番目の項目だけが利益の質を見ており、そこはこのツールの①と同じ考え方です。 M-Score と F-Score が逆を向くことは普通にあります (利益操作の兆候が出ている会社でも、表面上の財務指標は改善して見えることがあるためです)。

前々期末の総資産を入れない場合、前期のROAと資産回転率は期末総資産で代用します。 代用したときは結果画面にその旨を出します。

このツールが見ていないもの

  • ・株価とバリュエーション。割安かどうかは一切見ていません。利益の質が良い会社が割安とは限りません。
  • ・四半期の季節性。本決算どうし(当期と前期)を比べる前提です。四半期を入れると季節要因がそのまま出ます。
  • ・注記と個別事情。大型M&A、会計基準の変更、事業売却、収益認識基準の適用初年度などは、 正常でも数字が大きく動きます。ここは注記を読むしかありません。
  • ・連結と単体の違い。どちらで入れても計算はしますが、混ぜると意味を失います。片方にそろえてください。
  • ・金融業。銀行・保険・証券・リースは前提が違うため、総合判定を出しません。
  • ・将来。過去の決算数値の整理しかしていません。予測も確率も出しません。
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これは相場や業績の予測ではなく、過去の決算数値の整理です。 ここで出しているのは、あなたが入力した決算数値を決められた式に入れた結果だけです。 危険信号が点いても、それは粉飾や倒産の証明ではありません。 営業CFの一時的なマイナスは、設備投資の先行・季節要因・急成長期の運転資本の増加など、 まったく正常な理由でも起きます。逆に、信号がひとつも点かない会社が安全という意味でもありません (このツールは4つの角度しか見ていません)。 危険信号は「決算短信のキャッシュフロー計算書と貸借対照表の該当箇所を自分で読み直す合図」として使ってください。 売買や個別銘柄の推奨ではありません。